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[コラム] 慢性疲労症候群の診断基準とは?

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慢性疲労症候群の診断基準

慢性疲労症候群の原因については、複数の要因がありますが、ME/CFSの日本医療研究開発機構(AMED) 研究班(旧厚生労働省 研究班)が、診断基準を定めています。

筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)臨床診断基準

Ⅰ.6ヵ月以上持続ないし再発を繰り返す以下の所見を認める (医師が判断し、診断に用いた評価期間の50%以上で認めること)

  1. 強い倦怠感を伴う日常活動能力の低下*
  2. 活動後の強い疲労・倦怠感**
  3. 睡眠障害、熟睡感のない睡眠
  4. 下記の(ア)または(イ)
    (ア)認知機能の障害
    (イ)起立性調節障害

Ⅱ.別表1-1に記載されている最低限の検査を実施し、別表1-2に記載された疾病を鑑別する
(別表1-3に記載された疾病・病態は共存として認める)

*:病前の職業、学業、社会生活、個人的活動と比較して判断する。体質的(例:小さいころから虚弱であった)というものではなく、明らかに新らたに発生した状態である。過労によるものではなく、休息によっても改善しない. 別表2に記載された「PS(performance status)による疲労・倦怠の程度」を医師が判断し、PS 3以上の状態であること。

**:活動とは、身体活動のみならず精神的、知的、体位変換などの様々なストレスを含む。



別表1-1. ME/CFS診断に必要な最低限の臨床検査

  1. 尿検査(試験紙法)
  2. 便潜血反応(ヒトヘモグロビン)
  3. 血液一般検査(WBC、Hb、Ht、RBC、血小板、末梢血液像)
  4. CRP、赤沈
  5. 血液生化学(TP、蛋白分画、TC、TG、AST、ALT、LD、γ-GT、BUN、Cr、尿酸、 血清電解質、血糖)
  6. 甲状腺検査(TSH)、リウマトイド因子、抗核抗体
  7. 心電図
  8. 胸部単純X線撮影


別表1-2. 鑑別すべき主な疾患・病態

  1. 臓器不全:(例;肺気腫、肝硬変、心不全、慢性腎不全など)
  2. 慢性感染症:(例;AIDS、B型肝炎、C型肝炎など)
  3. 膠原病・リウマチ性、および慢性炎症性疾患:
    (例;SLE、RA、Sjögren症候群、炎症性腸疾患、慢性膵炎など)
  4. 神経系疾患:
    (例;多発性硬化症、神経筋疾患、てんかん、あるいは疲労感を惹き起こすような薬剤を持続的に服用する疾患、後遺症をもつ 頭部外傷など)
  5. 系統的治療を必要とする疾患:(例;臓器・骨髄移植、がん化学療法、 脳・胸部・腹部・骨盤への放射線治療など)
  6. 内分泌・代謝疾患:(例;糖尿病、甲状腺疾患、下垂体機能低下症、副腎不全、など)
  7. 原発性睡眠障害:(例;睡眠時無呼吸症候群、ナルコレプシーなど)
  8. 精神疾患:(例;双極性障害、統合失調症、精神病性うつ病、薬物乱用・依存症など)


別表1-3. 共存を認める疾患・病態

  1. 機能性身体症候群(Functional Somatic Syndrome: FSS)に含まれる病態線維筋痛症、過敏性腸症候群、顎関節症、化学物質過敏症、間質性膀胱炎、機能性胃腸症、月経前症候群、片頭痛など
  2. 身体表現性障害 (DSP-IV)、身体症状症および関連症群(DSM-5)、気分障害(双極性障害、精神病性うつ病を除く)
  3. その他の疾患・病態
    起立性調節障害 (OD):POTS(体位性頻脈症候;postural tachycardia syndrome)を含む若年者の不登校
  4. 神経系疾患:
    (例;多発性硬化症、神経筋疾患、てんかん、あるいは疲労感を惹き起こすような薬剤を持続的に服用する疾患、後遺症をもつ 頭部外傷など)
  5. 合併疾患・病態
    脳脊髄液減少症、下肢静止不能症候群(RLS)

出典:https://www.fuksi-kagk-u.ac.jp/guide/efforts/research/kuratsune/


つまり、一過性の疲労症状ではなく、日常生活に支障をきたす程度の慢性疲労症状やそれに随伴する症状が半年以上にわたり続くこと。さらに、他の疾患が除外されている必要があるということです。

このように他の似たような症状をきたす疾患を除外した上で診断されることを、「除外診断」と言います。言い換えると、ある程度症状が似ている病態をひとまとめにしたけれど、これは、その原因についてはまだまだ特定できておらず、色々な要素が関係している可能性があるということを意味しています。

うつ病と慢性疲労症候群の共通点と相違点について

慢性疲労症候群によく見られる症状は、以下のようなものです。
・記憶力、集中力の低下
・筋肉痛
・関節痛
・のどの痛みや微熱などの風邪様症状
・首やわきの下のリンパ節の腫大や圧痛
・睡眠障害
・頭痛
・低血圧
・胃腸が過敏
・体の体温調節がうまくなく、暑いのも寒いのも苦手
・音や光に対して過敏

これらの症状は、身体の疲れだけではなく、メンタルにも大きな影響を及ぼします。
そして、眠れない、やる気が出ない、外出できない…などの症状が続くと、「もしかして、うつ病ではないだろうか」と疑うようになります。

しかし似た症状であっても、慢性疲労症候群とうつ病は似て非なる病気です。
うつ症状があることと、うつ病とは異なります。慢性疲労症候群などで脳に炎症が起こることで、「気持ちが落ち込む」という症状が出るということです。

「最近、なんだか気持ちが落ち込む」からという理由で、すぐに「自分はうつ病なんじゃないか」と疑う前に、他の全身症状がないかどうかを自分でチェックしましょう。

慢性疲労症候群でうつ症状が出ている場合には、他に身体の倦怠感が強かったり、頭痛や吐き気、筋肉痛に、関節痛などの症状を伴うことが多くあります。

うつ病の場合は、体重減少や睡眠障害などの症状を伴うこともありますが、一般的には身体の症状は乏しいことが多いでしょう。



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