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[コラム] アルツハイマー病も、体の炎症を抑え解毒機能を高めることで改善する可能性があります。

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アルツハイマー病は脳の変性疾患の中で一番多い病気です。これまでは、一度、罹ってしまうと治ることは不可能であると考えられてきました。
実際に、莫大な費用をかけてアルツハイマー病の治療薬が開発されてきましたが、思うような結果が得られていません。
このコラムでは、どうしてこれまでの治療薬やアプローチでは効果がでなかったのかについて説明し、最近注目されている「リコード法」について紹介します。
「リコード法」とは、デール・プレデセン博士が開発した治療法で、機能性医学に基づき、体の炎症を抑え、体に溜まった毒素を解毒する治療法です。この治療法で単に予防するだけではなく、ある程度進んだアルツハイマー病の患者さんの、症状が改善していることが報告されています。

アルツハイマー病の原因と考えられてきたアミロイド沈着について

認知症の原因の一つである「アルツハイマー病」は、少し前までは脳にアミロイドという特殊な物質が沈着して起こる病気であると考えられていました。これは「アミロイド仮説」と言われ、アルツハイマー病の治療の土台になっている考え方です。
そのため、アミロイドの沈着を抑制したり、一度沈着したアミロイドを溶かしたりする薬剤が、莫大な資本を投資して開発されてきました。
しかし、結局のところこれらの薬剤ではアルツハイマー型認知症は治せませんでした。効果をうたって発売された「認知症薬」も、実は「認知症の進行を多少遅らせるだけ」であったり、改善が実証されず認可が取り消されたりしたのです。
最近分かってきたのは、アミロイドの沈着は実はアルツハイマー病の原因ではなく、脳の炎症を抑えるためにできた「結果」でしかなかったということです。炎症の結果としてできたアミロイドを薬で抑えても、根本の炎症が消えたわけではありません。「結果」として脳内に溜まってきたアミロイドをいくら除去しても、根本的な解決にならなかったのは当然と言えば当然だったのです。

このような治療法に対して、アミロイドの沈着する「原因」を突き止め、改善するという「リコード法」という治療法が提唱されています。

体の炎症を抑え解毒機能を高めることで、アルツハイマー病が改善した症例が報告されています

「リコード法」を提唱しているのは、デール・プレデセン博士という専門医です。
プレデセン博士の公式ホームページに博士の紹介が載っています。どういう先生かを見てみましょう。

ブレデセン博士の公式ホームページはこちら

 

トップページに書かれてある内容を翻訳します。

An internationally-recognized expert in the mechanisms of neurodegenerative diseases, Dr. Dale Bredesen’s career has been guided by a simple idea: that Alzheimer’s as we know it is not just preventable, but reversible. Thanks to a dedicated pursuit of finding the science that makes this a reality, his idea has placed Dr. Bredesen at the vanguard of neurological research, and led to the discoveries that today underlie the ReCode Report.
Dr. Bredesen earned his MD from Duke University Medical Center and served as Chief Resident in Neurology at the University of California, San Francisco (UCSF) before joining Nobel laureate Stanley Prusiner’s laboratory at UCSF as an NIH Postdoctoral Fellow. He held faculty positions at UCSF, UCLA and the University of California, San Diego. Dr. Bredesen also directed the Program on Aging at the Burnham Institute before joining the Buck Institute in 1998 as founding President and CEO.
Dr. Bredesen’s research explores previously uncharted territory in explaining the physical mechanism behind the erosion of memory seen in Alzheimer’s disease, and has opened the door to new approaches to treatment. This work has led to the identification of several new therapeutic processes that are showing remarkable early results.
Dr. Bredesen is a prodigious innovator in medicine, with over thirty patents to his name. Notably, he put much of his finding and research into the 2017 New York Times best-seller The End of Alzheimer’s.

—–以下翻訳—–

デール・ブレデセン博士は神経変性疾患のメカニズムの研究の専門家で、そのキャリアーは一つのアイデアに貫かれています。
それは「アルツハイマー病は予防することができるだけではなく、可逆的でもある」というアイデアです。
そのアイデアの実現に向けた研究の甲斐あって、彼は神経学的研究の先駆者として知られるようになり、今日の「リコード法」の基礎となる発見につながりました。

ブレデセン博士はカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)で、ノーベル賞受賞者であるスタンリープルシナー博士の研究室にNIH博士研究員として参加しました。その後、デューク大学・メディカルセンターで医学博士号を取得し、UCSFで神経学のチーフレジデントに従事しました。
彼はUCSF、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)、カリフォルニア大学サンディエゴ校で教授職を務めました。そしてバーナハム研究所で老化に関するプログラムの指導に当たった後、1998年にバック研究所に社長兼CEOとして迎えられました。

ブレデセン博士の研究は、これまで誰も手をつけなかった領域を研究し、アルツハイマー病に見られる記憶の退化がどういう物理的メカニズムで起こっているのかを説明しました。そして、新しい治療のアプローチへの扉を開いたのです。 この研究によって、いくつかの新しい(アルツハイマー病の)治療プロセスが示されるようになり、その治療プロセスは早い時期から驚くべき結果を示しています。

ブレデセン博士は医学の驚異的な革新者であり、30以上の特許を保有しています。
彼はこれまでの発見と研究の多くを「The End of Alzheimer’s」にまとめて出版し、それが2017 New York Timesのベストセラーになったことは特筆すべき事でしょう。
—–翻訳以上—–

これらの情報からも、プレデセン博士がアルツハイマー病などの神経変性疾患の専門家であり、相当なキャリアを積み上げて来た医師であることがわかります。
「The End of Alzheimer’s」は米amazonランキング1位、New York Times紙、Wall Street Journal紙でベストセラーを記録しました。世界29カ国で翻訳出版されています。2017年に出版され、日本語にはその翌年に翻訳されています。この手の専門書にしては異例の早さだと言えるでしょう。

「The End of Alzheimer’s」の翻訳本は以下で見ることができます。

Amazonで見る

プレデセン博士の研究によると、脳は、1. 炎症、2. 栄養不足、3. 毒素という3つの脅威に晒されると、それらに対する「防御反応」としてアミロイドを脳内に集積させ、脳自体を守ろうとするということです。これらの3つの原因が改善されないと、脳内に集積するアミロイドが過剰状態になってしまい、逆に脳神経を破壊するようになるということが解明されたのです。
病態を説明する「仮説」はこれまでにもたくさん提唱されてきましたが、驚くべきはプレデセン博士の理論に従って、体から炎症や毒素を取り除き不足している栄養素を補うことで、軽症であればアルツハイマー病が改善したということです。本の中には具体的な症例がたくさん紹介されています。

機能性医学による治療は、これまでの「エビデンスに基づいた治療」では証明することが難しい。

治療については非常に専門的な内容が書かれており、分かりにくいかもしれませんが、「機能性医学」とはどのような治療であるかを知る上でとても役に立つ本です。是非ご一読をおすすめします。
この本に書かれている治療法(リコード法)は、単にアルツハイマー病の治療になるだけではなく、「炎症」や「毒素の蓄積」に起因する全ての病気を予防する可能性があるでしょう。脳梗塞や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患やがんなどにも効果がある可能性があります。

ただ問題点がないわけではありません。問題点というよりは、これまでの「医療基準」の限界を表していると言えます。
「機能性医学的な治療」はひとつの薬剤を飲めばいいという単純なものではなく、さまざまな手法を用いて体全体のバランスを整えていく治療法であるため、現代医学の標準的な評価方法である「(エビデンスを得るための)二重盲検法」に適さないという、著者の意見です。
実際に、このような治療効果のある「リコード法」を二重盲検で研究をしようとしたところ、あらゆる(研究費用を提供する)基金から断られたというエピソードが書かれています。患者の状態に合わせて炎症を抑え、毒素を排出し、栄養素を補うというようなオーダーメイド治療は、二重盲検法の治療デザインに適さないということです。
医学の世界では、「エビデンスが示されている」ことは非常に重要な価値基準です。しかし機能性医学による治療法では、治療を標準化できないため、この価値基準を満たすことは難しいのです。
しかし、その治療法でアルツハイマーの患者さんが治った症例が多くあるのならば、機能性医学的な治療は、「エビデンスを示すのに、二重盲検法だけが重要な価値基準である」とするこれまでの考え方に警鐘を鳴らしているのかもしれません。
「二重盲検で検証できるかどうか」を重視するのか、機能性医学による治療法を客観的に評価できるような新しい評価基準を確立していくのか。
これまでの治療ではアルツハイマー病の改善は成功していないだけに、大きな選択肢を突きつけられていると言ってもいいと思います。

まとめ

  • 神経変性疾患の中で1番多いアルツハイマー病の病因と治療について説明しました。
  • これまで、アルツハイマー病の原因と考えられて来た「アミロイド」が、研究の結果、実は脳を守るために結果的に増えて来た物質であることがわかりました
  • プレデセン博士の研究から、アミロイドが脳に沈着する原因として、①炎症、②栄養不足、③毒素であることがわかってきました
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    「機能性医学」に基づいた治療法により、これらの原因を除去することによって、これまで治ることがないと考えられていたアルツハイマー病の改善例が報告されています。今後、機能性医学がもっと理解され、広まっていくことによって、アルツハイマー病治療が大きく進歩する可能性があると思われます。



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