慢性疲労症状と重金属
原因の分からない疲労症状が慢性的に続く場合があります。病院で検査を受けても異常がないと言われ、「精神的なものでしょう」と心療内科の受診を勧められることも少なくありません。また、疲労感だけではなく、全身の筋肉痛や関節痛などの随伴症状を伴い、6ヶ月以上続く場合は、「慢性疲労症候群」と診断されることがあります。
診断名がついたからと言って、原因や治療法が分かるわけではなく、現在の医療では様子を見ることしかできません。
そのような患者さんでも、機能性医学の立場から検査を行うと異常が見つかる場合があります。特に、水銀などの有害金属が原因と思われる場合も少なくありません。実際に、身体の状態を整え、重金属を体外に排出する治療を行うことで、これまで何年も続いていた症状が回復に向かうことも少なくないのです。
今回は、50歳代の女性で、数年前から重症の疲労症状と身体全身の痛みを訴えてこられた方が、著明な水銀の蓄積を認め、排出することによって回復された治療例をお示しします。
体内にどれほど重金属が溜まっているのかを評価するためには、尿中重金属排泄試験という検査があります。これは、重金属を排泄するためのキレート剤がどれほど有効かを評価する上でも重要な検査です。
キレート剤1錠(500mg)を内服していただき、その後6時間の間に尿中に排泄された有害金属の量を測ります。今回の患者様の場合は、水銀と共に鉛が振り切れています。大量の水銀、鉛が体内に蓄積していることを示します。(下図参照)
当院を初めて受診された頃は、ほぼ寝たきりに近い状態でしたが、2年間キレーション治療を行い、徐々に症状が改善してきました。
治療前後での重金属の検査結果を図に示します。
図 治療前と2年後の検査結果の比較
初診時と比べて、排出される水銀、鉛の量がかなり減ってきています。まだ、水銀と鉛は排泄されていますが、自覚症状はかなり改善してきました。
標準的医療では、重金属が体内に蓄積することが様々な体調不良の原因になるということについては全く知られていません。しかし、原因不明の症状で当院を受診される方で検査を行うと、重金属が溜まっていて、それが原因と思われる場合が少なくないのです。今後は、このような観点からも診断をしていくことが非常に重要であると考えられます。
最後に、患者様からいただいた体験談を掲載します。
元々子供の頃から、度々扁桃腺の熱を出しては学校を休むことがあり、酷い便秘で困っていました。大人になっても変わらず、病院や、漢方薬や整体に行きながら、弱いながらも、家事と仕事の両立をこなしていました。
10年くらい前から、胃腸痛、喉の痛みと、つかえた感じ、胸焼け、口の中の痛み、異常な足の冷え、胸焼け、疲れ、眠気、不眠、腕や肩、足の痛み、痺れなど、色々な症状が出たり引いたりしていましたが、その都度、対処療法を受けながらなんとかしのいでいました。
4年くらい前に、酷い副鼻腔炎になり、耳鼻科に長く通っているうちに、どんどん体調が悪くなっていきました。このときばかりはなんとも表現しがたい倦怠感に襲われ、足の付け根の痛みも酷くなり、立ったりしゃがんだりがつらくなり、仕事にも支障がでるようになり、泣く泣く退職しました。内科、整形外科、婦人科、脳神経内科などに行き色々な検査をうけましたが、異常なしでした。整体、鍼灸、漢方や、祈祷もしてもらいましたが、良くはならず、最終的には、心療内科にでも行ってみたら?としか言われなくなり行きました。
うつ病で、痛みも精神的なものだと言われ、薬を処方されましたが、どんどん動けなくなり、ついには寝たきりになりました。寝ていても、あちこち疼くし、胸に鉛でも抱えているような苦しさで、立ってもすわってもヘトヘトで、このまま、自分でトイレやお風呂にも行けなくなったらどうしようと不安に襲われ、絶望し何度も泣き、生き地獄のような日々を過ごしていました。小西先生のホームページは、「慢性疲労症候群」のキーワードで検索していて、目に留まり、遠隔診療をして下さることを知り、最後の望みと、メールしました。
必要な、検査を案内して下さり、結果をみて、私は酷いリーキーガットで、体のバランスが崩れきっているということがわかりました。
今まで原因不明と言われ続けていましたから、原因があったことに希望が持てました。
重金属の検査では、水銀や鉛が、びっくりするくらい溜まっていたので、それを体から出す過程が、しんどくて、不安になったり、焦ったりしました。
そのたびに、先生は、
「これ程重金属が溜まっていたら、しんどくないはずがない!
痛くないはずがない!良くなりますよ!原因はこれだからね!焦らす頑張りましょう!」と励まして下さいました。できるだけ体に負担が無いように、ゆっくり治療をしてもらっているうちに、波をうちながらも、寝たきりから、徐々に起きられるようになり、出来ることが増え、たくさんあった症状が、少しづつ気にならなくなっていきました。
大好きだった車の運転も、もう二度と出来ないと、諦めていましたが、出来るようになったときは、嬉しくて、涙が出ました。あんなに苦しかった体が、ここまで回復出来たことが奇跡のようです。
まだ、治療途中なので、まだまだ元気になりたいと思います。
辛い50代でしたが、元気になることを諦めなくて本当に良かったです。
もう行くところが無いくらい、病院、治療院巡りをしたので、小西先生の治療は、途中で辞めるという選択肢はありませんでした。
遠回りをしましたが、結果的にはそれが良かったと思います。私のように、病院にいって、あらゆる検査をしても異常なしと言われ、自分で調べても
慢性疲労症候群だとしたら、治療方法ないという情報ばかり溢れる中、くるしんでいる人が、1人でも多く救われる事を願っています。
執筆者プロフィール
医療法人全人会理事長、総合内科専門医、医学博士。京都大学医学部卒業。天理よろづ相談所病院、京都大学附属病院消化器内科勤務を経て、2013年大阪市北区中津にて小西統合医療内科を開院。2018年9月より医療法人全人会を設立。