受診時13歳 男児
2020年6月初診
人工香料などで頭痛、倦怠感があるということで当院を受診されました。
帝王切開で出産。
多人数のいる閉鎖された空間にいると頭痛や息が苦しくなっていることができない。
便通はふつうに毎日ありますが、腹痛が良く起こるということでした。
小学校1年の時に、隣家の畑で除草剤を撒かれた頃から、いろいろなものにかぶれるようになってきました。柔軟剤やペンキなどの近くにいるだけで身体がかぶれたりするようになってきましたが、大きくなるにつれて食物にもアレルギー反応を示すようになってきました。
ナッツ類や蕎麦、卵、乳製品でアナフィラキシーを起こしたことがあります。
小児科を受診し、シックハウス(化学物質過敏症)、食物アレルギー(アナフィラキシー)と診断されています。根本的に治す方法はないので、アレルギーの起こる物質を出来るだけ避けるようにとの指導をされています。
当院での治療経過
当院を受診されてから、検査結果に基づいて腸内環境を整え、解毒機能を高める治療を開始しました。治療を開始して3ヶ月経った頃から倦怠感がなくなり咳き込むことがなくなりました。
治療開始4ヶ月後からカンジダ除菌を開始し、アトピーが改善し、腹痛がなくなりました。
治療半年経った頃からキレーション治療を開始。徐々に化学物質に対しての反応もなくなり、治療開始8ヶ月後から学校にも問題なく行けるようになりました。
化学物質過敏症が起こる理由についてはまだ分かっていない点が多いですが、体内に蓄積した有害金属や環境毒素と言われるものが、体の免疫反応のバランスを崩していることが一因になっていると考えられます。今回は、重金属に関係する検査データを示します。
検査データ
左上の図は毛髪中の有害金属を示します。ヒ素と水銀の排出量が多いことがわかります。右下図は毛髪中の必須ミネラルを示します。全体的に左側に偏っており、これは有害金属によるミネラルの排泄障害が起こっていることを示唆しています。
腸内環境を整え、腸管内のカンジダ菌除菌治療を行った後、重金属のキレーション治療を開始しました。
これらの前治療をきっちりと行った上で、キレーション治療を行わないと、さまざまな副作用が起こることがあります。最初からいきなりキレーション治療を行うことは非常に危険です。
治療前後での、尿中重金属排泄試験の結果を示します。キレーション治療で使用するキレート剤を1錠内服した後の6時間の尿中にどれくらいの有害金属が排泄されたかを見たものです。
これまでのコラムでの何度か触れてきましたが、治療前には有害金属が排泄されていないことに注目してください。これは、体の解毒機能がうまく働いていないため、キレート剤を飲んでも有害金属が排泄できないということを意味します。決して、体内に有害金属が溜まっていないことを示すものではありません。
その証拠に、治療を開始して半年後の検査では、有害金属が排泄されるようになってきています。1年後には、負荷試験をしても有害金属が排泄されなくなっています。
これは、キレート剤で排泄できる有害金属が体内からなくなったということを意味しています。治療前のデータと比較して同じように見えますが、全く意味するところが違うということです。
お母様からいただいた体験談
15歳の息子(2022年時点)は小西先生に化学物質過敏症を治していただきました。
農薬事故により6歳で発症したのですが、初めはきれいな空気と食べ物があれば治せるのではないかと考えていました。しかし、転地療養をしても症状が軽くなるだけで、きっちりと治ることはありませんでした。
小西統合医療内科にかかり、腸内環境を整えていただき、少量の化学物質では体調を崩すことがなくなりました。数か月でよい結果が出、人工的なものによってできた「きずあと」は人の手で治していただくのが一番だと実感しました。
治療中、腹痛を訴えることがありました。しかし、次回の診察日を待たなくてもメールで相談でき、なおかつ、すぐに返信いただけました。サプリや薬を変更すると、腹痛はピタリとおさまり、治療を受け続けることができました。
当初の目的は、化学物質過敏症とアナフィラキシーショックを治していただくことだったのですが、いくつかのおまけが付いてきました。
まず、ぼーっとしていることが多い子だったのですが、キレーション治療の直後より冗談を口にするようになりました。性格の変わりように家族全員ただ驚いています。
通年アトピーも消失しました。さらに、腹痛で週の半分登校できなかったのですが、今は腹痛は消え、ほぼ毎日登校しています。
執筆者プロフィール
医療法人全人会理事長、総合内科専門医、医学博士。京都大学医学部卒業。天理よろづ相談所病院、京都大学附属病院消化器内科勤務を経て、2013年大阪市北区中津にて小西統合医療内科を開院。2018年9月より医療法人全人会を設立。