先週は、10歳代の頃に1型糖尿病を発症し、その後慢性疲労症候群を発症したと言う40歳台の患者さんが診察に来られました。採血で様々な自己抗体が出ているということで、「自己免疫性慢性疲労症候群」と診断されているようです。
1型糖尿病自体も自己免疫性疾患なので、慢性疲労症候群も何らか自己免疫的な機序が疑われているということです。珍しい病態だということで、大学病院でもたくさんの検査を受けて来られたのですが、症状が改善しないということで相談に来られました。
ただ、機能性医学的に見ると、自己免疫的な機序も慢性疲労症状も、合併しても不思議なことではありません。
おそらくは、腸内環境が悪いために、リーキーガット症候群を発症し、様々な食事性の抗原が免疫バランスを刺激することによって自己免疫疾患が合併するということは多くのエビデンスがあります。
詳しく知りたい方は、自己免疫疾患とリーキーガット症候群をかけて検索されるとたくさんの文献が出てきます。(文末に文献を紹介します)
慢性疲労症候群も、リーキーガットがきっかけとなって、様々な炎症性物質が体内に蓄積することで起こってきます。慢性疲労症候群の機序についてはまだ全て解明されたわけではありませんが、脳脊髄系に起こった慢性炎症が原因ではないかということまでわかってきているのです。
ここ数年来続くという37度台の微熱も、これですっきりと説明できますよ、という話をさせていただきました。これまでたくさんの病院を受診されていましたが、いつも「これは難しい病態だ」みたいな顔をされてきたので、「すっきりと説明できますよ」という言葉に、明るく笑顔を見せてくださったのがとても印象的でした。
患者さんを診察させていただいた後で感じた正直な気持ちをここに書かせていただきます。
わざわざ、「自己免疫性慢性疲労症候群」という、さもわかったような病名をつけていても、結局は根本的治療ができていないではないかと思いました。
腸内環境の乱れやそれに付随して起こるリーキーガット症候群という病態を知ってさえいれば、1型糖尿病、、自己抗体陽性、数年来続く微熱、慢性疲労症状は全てすっきりと、何の矛盾もなく説明することができます。
大学病院を頂点とした標準的な医療は、どうして、機能性医学で得られているこれらのエビデンスを謙虚に取り入れ、素直に取り入れないのでしょうか?
実際に何年も症状に苦しまれている患者さんのことを考えるととても悲しい気持ちになります。
私は、現代の標準的医療についてはとても有用だと思いますし、機能性医学とは敵対するものだとは思っていません。お互いのいいところを取り入れて、患者さんの本当の健康に貢献するようにするべきだと思います。
一開業医としてはできることは限られていますが、せめてこのような事実を発信し続けていきたいと思う今日この頃です。常に希望を持ちたいですね。
私が、エビデンスのない「わたごと」を言っているのではないことを、一人でも多くの医療関係者の方にも理解していただきたいという気持ちで、文献をいくつか引用します。
慢性疲労症候群とリーキーガット症候群とをかけて検索しても同様にたくさんの文献が出てきます。
自己免疫疾患とリーキーガットとの関連性を示唆する文献
1. **Fasano, A. (2012). “Leaky Gut and Autoimmune Diseases.”
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22109896/
このレビュー記事では、腸の透過性の増加が自己免疫疾患の発症にどのように寄与するかについて詳述されています。特に、ゾヌリンというタンパク質が腸のバリア機能に重要であり、その過剰な活性が腸の透過性を高め、自己免疫反応を引き起こす可能性があるとされています。
2. Alessio Fasan & Jeroen Viss ” Tight Junctions, Intestinal Permeability, and AutoimmunityCeliac Disease and Type 1 Diabetes Paradigms”
https://nyaspubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/j.1749-6632.2009.04037.x
この文献は、腸の透過性増加がセリアック病と1型糖尿病の発症に関与し、タイトジャンクションの破綻が自己免疫疾患を引き起こす可能性を示しています。
3. Mu, Q., & Kirby, J., Reilly, C. M., & Luo, X. M. (2017). “Leaky gut as a danger signal for autoimmune diseases.”
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5440529/
このレビューでは、腸の透過性の増加が免疫系にどのように影響を与え、自己免疫疾患を引き起こすかについて議論されています。リーキーガットが自己免疫疾患の危険信号となる可能性があると結論づけられています。
執筆者プロフィール
医療法人全人会理事長、総合内科専門医、医学博士。京都大学医学部卒業。天理よろづ相談所病院、京都大学附属病院消化器内科勤務を経て、2013年大阪市北区中津にて小西統合医療内科を開院。2018年9月より医療法人全人会を設立。