食物アレルギーは、フードアレルギーや食物過敏とも呼ばれる、主に食品(食べ物)を摂取したときに起こるアレルギー反応です。
子どもに出やすい症状だと思われがちですが、大人にとっても無関係ではありません。今まで食べても平気だったものが、突然アレルギー反応を引き起こすというケースも、多々あるのです。
日本人の2人に1人は、何らかのアレルギーを持っているといわれています。また成長の過程で、さまざまなものを口にし、体内に蓄積して生きてきたのであれば、大人がアレルギーを発症してもおかしいことはありません。
アレルギーのメカニズムと、2つの種類
アレルギーは、身体にとって危険なものが外から入って来たときに、その物質をやっつけようとする身体の免疫反応のひとつです。たとえば、くしゃみや鼻水、皮膚に出るアレルギー反応自体は、体外からの侵入者をやっつけてくれている、人体にとって重要な仕組みなのです。
卵、大豆、牛乳、そば、えび・かになどを食べたとき、じんましん、身体のかゆみ、呼吸困難といった症状が出る食物アレルギーも、基本は同じメカニズムで起こります。
このようにすぐに症状の出るアレルギーは、即時型アレルギー(1型アレルギー)といわれ、IgE抗体という免疫反応が関係しています。これは、原因となる食物を食べてから症状の出るまでの時間が短いので原因がわかりやすいアレルギーです。
それに対して、食物を摂取後、数時間から数週間後に症状が出現する食物アレルギーがあります。これは、即時型アレルギーに対し、「遅延型アレルギー(3型アレルギー)」といわれています。
遅延型フードアレルギー
遅延型フードアレルギーは、頭痛、めまい、うつ、などの精神神経症状や、肩こり、慢性疲労など、一見食べ物には関係のないような多彩な症状を引き起こします。
近年では、さまざまな健康障害にこの遅延型フードアレルギーが関わっていると指摘されています。
また、好んで食べている食物にこのタイプのアレルギーが多いのも特徴です。実は、好物だと思っていたものが、健康を害する原因になっている可能性があるのです。
遅延型フードアレルギーは症状がすぐには出ないため、正しく診断することが困難で、「なんとなく毎日調子が悪い」といった、慢性的な不調の原因になっている可能性もあります。
特に、ストレスを抱えた大人の場合は、まさか体調不良の原因が好みの食べ物にあるとは思いつかず、疲れや加齢・体質のせいにして不調を放置することも多くあるため、注意が必要です。
大人の遅延型フードアレルギー、こんな症状に注意
以下にあげた症状はすべて、遅延型フードアレルギーで起こる可能性があるものです。
・慢性疲労症候群
・起立性調節障害
・肌荒れや湿疹
・アトピー性皮膚炎
・腹痛や消化不良
・過敏性腸症候群
・イライラや集中力低下、メンタルの不調
・不妊
・むくみ
・体重増加
・冷え性
・肩こり
・めまい、しびれ
・頭痛、頭重感
・不眠
・筋肉、関節の痛み
・喘息
もしもあなたが、上にあげた症状があり、はっきりとした原因がわからないのであれば、食べ物に原因があるかも知れません。
大人の食物アレルギー、治すヒント
では、大人のフードアレルギーを改善するには、どうしたらいいのでしょうか。
ヒントは2つ。
まずは、原因と思われる食べ物を一時的に控えてみて、体調を確認すること。
もうひとつは、その食べ物にいちいち反応しないような身体をつくることです。
習慣的に食べているものを見直す
まず、大人の食物アレルギーは、毎日のように食べるものが原因になるケースがあります。たとえばチョコレートやヨーグルト、卵など、当たり前のように毎日口にするものには、注意が必要です。
美容・健康のために、毎日リンゴを食べているが、実はリンゴに体調不良の原因があった…などという場合もあるのです。
もし「これが原因かも?」と思ったら、数週間、その食べ物を口にしないようにしてみましょう。
そして、食べていた時期と、控えた時期の体調を比べ、原因となる食べ物がどれくらい身体に影響を与えているのかを検証します。
腸内環境を見直す
即時型・遅延型に限らず、フードアレルギーの原因には、腸内の環境が大きく関係しています。
私たちの腸の中には、100兆個もの腸内細菌が存在しています。
これらの細菌たちはただ腸内にいるだけではなく、食べたものをきちんと消化・吸収させるためにとても重要なはたらきをしていることが分かってきました。
そして、腸内細菌が正しくはたらくことで小腸の中の粘膜が「バリアー」の役割となり、腸から「不要なもの」が体の中に入ってこないようにしています。
ところが、何らかのストレスが原因で腸内細菌のバランスが崩れると、腸内環境が乱れてしまいます。
すると腸の粘膜と粘膜の間に穴が開き、「すきま」ができてしまいます。そして、その「すきま」から、タンパク質やペプチドが血液中にもれていってしまうのです。
このような状態を「リーキーガット」といいます。
リーキーガットの状態では、十分に分解されていない物質が血液中に漏れてしまうため、身体が「異常事態」と判断してアレルギー反応を起こします。
つまり、アレルギー反応が起こること自体が問題なのではなくて、アレルギーを起こすような「異物」が体の中に漏れて入ってくることが問題なのです。
腸内環境のバランスを取ることで、食物アレルギーが改善できたという例はたくさんあります。腸にあいた穴がふさがれば、アレルゲンが血中に漏れ出すことがなくなるからです。
大人だからこそ、注意も改善もできる食物アレルギー
大人になると、自分がいつもどのようなものを食べているか、またどのような不調を抱えているかが、自分で判断できるようになります。
だからこそ、改善のために具体的な策を取ってみて欲しいのです。
今のあなたの身体をつくっているのは、今まで食べてきた食事や、生活習慣です。
食物アレルギーは、単なる身体の反応ではなく、もっと全体的な問題ですから、そこを見直すことで、何らかの改善につながるケースが多いのです。
たとえば、ストレスの多い生活を続けているなら、免疫力が下がっているでしょうし、ジャンクフードのドカ食いが続いているなら、肝臓や腎臓に大きな負担をかけていることになります。
そうなると、腸も弱り、メンタルへの影響も出やすくなってしまうでしょう。その結果、アレルギーがどんどんひどくなってしまうのであれば、早めに改善すべきです。
「これは少しおかしいな?」「食物アレルギーを治したいな」と思ったら、ただ単にアレルゲンとなる食べ物を避けるだけではなく、生活習慣を見直す・リーキーガットを改善するといった、根本的な対策を取るようにしてみましょう。
まとめ
大人だって、急に特定の食べ物にアレルギー反応を起こすことは、十分にあり得ます。しかし、反応がすぐに出るのならいいのですが、じわじわと慢性的な体調不良の原因になるるのであれば、注意が必要です。
腸の状態は、検査でわかります。即時型にしても、遅延型にしても、大人の食物アレルギーを改善しようと思ったら、まずは現状把握のための検査を受けてみることをおすすめします。
執筆者プロフィール
医療法人全人会理事長、総合内科専門医、医学博士。京都大学医学部卒業。天理よろづ相談所病院、京都大学附属病院消化器内科勤務を経て、2013年大阪市北区中津にて小西統合医療内科を開院。2018年9月より医療法人全人会を設立。