アトピー性皮膚炎は、根本的な治療が難しい病気のひとつです。
そもそも「アトピー」とは、「奇妙な」「見慣れない」という意味を持つ古代ギリシャ語「atopia」が語源となっています。
はじめの発症は幼少期のことが多く、季節や環境によって悪化・改善を繰り返し、なかなか完治しないという特徴があります。一般的には、6カ月以上(乳幼児では2カ月以上)症状が続くと、慢性と診断されます。
慢性化したアトピーは、身体のさまざまな場所を移動しながら発現を繰り返します。
たとえば、「顔の症状が改善したら今度はひじ・ひざの関節が悪化してきた」などと、自分ではコントロールできない奇妙な動きがあり、患者のストレスの一因となっています。
アトピー性皮膚炎の原因はいまだ解明されていない
医学は進歩していますが、アトピーのはっきりとした原因も、明確な治し方も、いまだ見つかっていません。そのため、一般的な皮膚科ではステロイド外用薬が処方されます。
ステロイドというのは、原因に関わらずなんでも体の炎症をおさえる働きがあります。その軟膏を塗れば、瞬間的には症状は改善します。
しかし、それはあくまで「対症療法」に過ぎません。ステロイドを止めれば、症状は増悪、再発するケースが多いからです。
また、ステロイドは強い薬のため、期的な使用では「副作用」を無視できません。アトピー性皮膚炎の治療には、症状を良くはしたいけれど、ステロイドは使用したくないというジレンマが存在し、患者を苦しめています。
アトピー性皮膚炎は、皮膚の問題ではない
とはいえアトピーはQOLを大きく下げる疾患です。明確な原因が不明であっても、放置するのではなく、根本的な治癒を目指して対策を取る必要があるでしょう。
まず、アトピー対策で知っていただきたいのは、アトピーは皮膚の問題だけではなく、実は体内の環境が原因となっている可能性が高いということです。
皮膚に出る症状は、体内で正しく老廃物の処理ができていなかったり、免疫力が弱くなってしまったことによる反応の現れです。
またアトピー患者はアレルギーをあわせ持つことも多く、家の中のハウスダストやダニ、カビやホコリなどに体が過剰反応して症状が悪化しているケースも見受けられます。
もちろん、乾燥によるかゆみなどは、スキンケアで多少改善が見込まれるでしょう。しかし、湿疹自体の原因は体内にあり、何かを塗ることでは、根本的な治療にはなりにくいのです。
皮膚は最後の排出ルート
体内の原因といっても、ひとつではありません。その人の生活習慣や生き方が腸内環境や免疫に影響を与え、身体の解毒機能を低下させています。
私たちの身体からは、日々、いろいろなものが排出されています。多少身体に悪い物質が溜まっても、リンパや汗、排泄などで体外に出せる機能が備わっているからです。
しかし、その排出ルートに問題があったらどうなるでしょうか。体内には、排出しきれなかった不要物・毒素がどんどん蓄積されていってしまいます。
そうなった身体は、緊急ルートを使うことがあります。
それが、皮膚です。
不要物や毒素が、仕方なく皮膚から排出されることで、アトピーのような原因不明の皮膚疾患が引き起こされるのです。
体内の原因を探る
アトピーの原因として考えられる体内の環境悪化には、以下のようなものがあります。
・腸内環境の悪化
・腸管のカンジダ症
・重金属の蓄積
これらに共通するのは、体内に溜まった老廃物・毒素が、うまく排出されずに、体内にとどまってしまっている状態だということです。
しかし腸内環境を整え、カンジダ菌の除菌治療や重金属のキレーション治療を行うことで、それまでステロイドを手放せず、夜もかゆみのため眠れなかった患者さんが、ステロイドを塗らなくても熟睡できるようになっておられます。
つまり、皮膚に出たアトピーにのみ目を向けるのではなく、その根本原因に目を向けなくては根本治癒は見込めないのです。
ストレスを軽減し、治療を進めることが大切
アトピーには精神的なストレスも影響します。
学校や仕事・人間関係でストレスを抱えていると、アトピーは悪化する傾向にありますし、ずっとかゆみに耐え、人目を気にする生活自体がストレスにもなり得るからです。
身体の中からアトピーの根本的治療を行う場合は、長期的に取り組む必要があるでしょう。そのため、症状の強い間はステロイドを使ってかゆみなどの症状を軽減しながら、根本的治療を行う方法がおすすめです。
根本的治療で成果が出るまでの間、塗り薬を併用することで、患者さんの苦しみを大きく軽減できるからです。
そして、身体のバランスを徐々に整え、自然な形でステロイドの使用量を減らすことを目的としましょう。
「いつの間にかステロイドを塗るのも忘れていた」というのが、一番ストレスもなく理想的な形ではないでしょうか。
検査で体内環境を把握する
アトピーの根本原因である体内の状態は、皮膚と違って自分で見ることができません。
そのため「体の中のどこが・どう弱っているのか」を突き止めてから治療にかからなくてはいけません。
自分の身体の状態を把握するためには、検査が有効です。
「遅延型フードアレルギー検査」
腸管の状態を見極め、腸内環境を整える治療を行います。
「有機酸尿測定」
カンジダ菌の有無を確認し、陽性の場合は除菌治療を行います。
「毛髪重金属検査」・「尿中重金属排泄試験」
重金属の蓄積が考えられる場合は、キレーション治療(重金属を体外に排泄する治療)を行います。
これらの検査で体内環境の状態を把握し、食生活の改善や除菌などを進めることで、身体は本来の「解毒力」を取り戻します。
そして、わざわざ皮膚から体内毒素を排出しなくても、自然な形で解毒ができるようになったら、アトピー性皮膚炎の症状は軽減し、かゆみや痛みなどのストレスを大幅に減らすことが期待できるのです。
まとめ
アトピー性皮膚炎の治療には、対症療法だけでもなく根本的治療だけでもない、お互いの良い点を取り入れた総合的なアプローチが重要です。
根本治療が難しく、良くなったり悪くなったりを繰り返す病気のため、治療を諦めてしまう人が多いのも事実です。症状には個人差もあり、すべての人に合う治療法は確立されていません。しかし、自分に合った治療法で体内環境からアプローチをすることで、症状の改善は不可能ではないのです。
執筆者プロフィール
医療法人全人会理事長、総合内科専門医、医学博士。京都大学医学部卒業。天理よろづ相談所病院、京都大学附属病院消化器内科勤務を経て、2013年大阪市北区中津にて小西統合医療内科を開院。2018年9月より医療法人全人会を設立。