ということで50歳代の女性が相談にみえられました。
便通は下痢になったり、便秘になったりして安定しません。しかも、食後にお腹が張って、食べれなくなるということでした。本来は一番楽しみであるはずなのに、食べることが憂鬱になるくらい調子が悪くなるということです。
私も消化器内科医なので、お気持ちはよくわかります。
ただ、消化器内科医の立場から見ると、過敏性腸症候群の患者さんの症状を聞くと、正直な話、次のような感想が起こってきます。
「厄介な患者さんがきたな」
「結局、あれこれ薬を飲んでも良くならないものな」
「来るところが間違っているよ。精神科に行った方がいいのに」
患者さんから見ると随分と酷い感想ですね。患者さんはとても真剣なのに、医者の側から見ると持て余してしまうのです。それほど、すっきりと良くならないのです。
ある意味では、これほど患者さんと医者との認識に大きなギャップがある疾患も少ないかもしれません。
内視鏡検査やCT検査をしてもなんの異常もないのに、その割には患者さんからの症状の訴えが大きいのです。整腸剤や過敏性腸症候群の薬を飲んでも、それですっきりと症状がおさまるということはほとんどありません。
消化器内科の分野では、もっともっと大変な病気はたくさんありますが(例えば癌やクローン病など)、過敏性腸症候群は「一番厄介な病気」と言ってもいいと思います。
しかし、目に見えた異常がないからといって、腸内環境に何も起こっていないわけでは決してありません。実際に、当院を受診してくださった過敏性腸症候群の患者さんでも、腸内環境や体のバランスを整えるという立場から、根本的治療を行なっていくと、症状が劇的に良くなる患者さんも多くおられます。
もちろん、重症度によってはそれなりの時間はかかりますが、腸内環境を整えるという観点から整えていけば絶対に良くなるのです。なぜなら、腸内環境というのは、本来がそういうものだからです。本来の姿に戻してあげることが重要です。
「過敏性腸症候群が治らない」というのは、根本的原因を見ることなく、目先の症状を薬で整えようとするから治らないのだと、確信を持って言えると思います。
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執筆者プロフィール
医療法人全人会理事長、総合内科専門医、医学博士。京都大学医学部卒業。天理よろづ相談所病院、京都大学附属病院消化器内科勤務を経て、2013年大阪市北区中津にて小西統合医療内科を開院。2018年9月より医療法人全人会を設立。