最近、遅延型のフードアレルギーを調べる検査を行うクリニックが増えてきています。食物アレルギーには2種類あって、原因となる食材を食べて、すぐにアレルギー反応が起こる「即時型アレルギー」と、しばらくしてから(数時間後から場合によっては数日)症状が出てくる場合とがあります。
遅延型のアレルギー反応の場合以下の特徴があります。
①原因となる食材を食べてから、症状が出るまでに時間がかかるので、なかなか気づかれにくい。
②出てくる症状が、いわゆる「アレルギー症状」と異なるので、なかなか気づかれにくい。
つまり、そのような病態があることを知って、検査をしないとなかなかわからないということです。
では、どのような検査を行うことができるのかというと、最初に挙げた「遅延型フードアレルギー検査」になります。
では、「遅延型フードアレルギー検査」は遅延型フードアレルギーの状態を知る上で本当に有用なのでしょうか?
結論から言うと、あまり有用であるとは言えません。と言うのは、この検査は検査会社によって、全く違う結果が出ます。さらに、偽陽性、偽陰性が多い検査としても知られています。
偽陰性、偽陽性とは、検査ではアレルギー反応は出ないが、実際に食べるとアレルギー症状が出たり、逆に、検査で陽性に出ているのに、食べても何の症状が出ないことを言います。
つまり、遅延型アレルギーの症状の原因食材を知る上では、全く無意味とは言えないまでも、あまり当てにできないと言うことです。この検査結果をもとに、食事の制限をしても、有用な場合もありますが、全く意味なく食事制限をさせられている場合が多いと言うことです。
通常の医学会ではこの検査に対しての批判が強く、実際に日本小児アレルギー学会では「遅延型フードアレルギー検査は食物アレルギーを判定する上では意味がない」と正式見解を出しています。
むしろこの検査を元に小児が不要な食事制限をすることは正常な発達を阻害する危険性があるという見解です。
とてもややこしいですね。検査をしないとわからないのに、その検査があまり信頼できないと言うことです。
ここで、そもそもの話になります。
遅延型フードアレルギーがどうして起こるのかと言うことです。
「アレルギー」という言葉を聞くと、無意識にその食材が悪いと言う印象を持ってしまいますが、実はそれは正しくありません。小麦アレルギーの原因は小麦ではありません。卵アレルギーの原因は卵が原因ではありません。
本当の原因は、「腸内環境そのもの」なのです。そして、遅延型フードアレルギーを治すためにはいくら原因と思われる食材を制限しても治りません。根本的に腸内環境を整えていく必要があるのです。
遅延型フードアレルギーというのは、実は腸内環境が乱れて、腸管が「過敏状態(Hypersensitive)」な状態になっていることが原因です。逆に、腸内環境が整って過敏状態が治ってくれば、食べてもどうもなくなってきます。
実際に、当院で全く小麦を食べれなかった方が、腸内環境を整えることで、問題なく平気で食べれるようになっている方が数え切れないくらい沢山いらっしゃいます。
せっかく遅延型フードアレルギー検査を行って、食事制限をしても根本的には治っていないということを知っていただきたいのです。
では、遅延型フードアレルギー検査は意味がないのかというとそういうことではありません。
食物制限の参考にはなりませんが、腸管の過敏状態の重症度を知る上ではとても役に立つ検査です。当院では、そのために一番基本的な検査として、腸内環境を整える治療を開始する前に、患者さんに行っていただいています。
YouTubeで「リーキーガット症候群」と「遅延型フードアレルギー」の関係について説明しています。食事制限をしても根本的な解決にならないのはなぜか? について説明しました。
https://www.youtube.com/watch?v=egBphfTb4Ww
執筆者プロフィール
医療法人全人会理事長、総合内科専門医、医学博士。京都大学医学部卒業。天理よろづ相談所病院、京都大学附属病院消化器内科勤務を経て、2013年大阪市北区中津にて小西統合医療内科を開院。2018年9月より医療法人全人会を設立。