リーキーガット症候群(腸管漏出症候群)とは
人間の臓器の中で「腸」がとても大切な役割を果たしているのは、皆さんもご存知でしょう。
腸には300~1000種類とも言われる微生物が存在し、様々や役割を果たして私たちの健康を維持してくれています。
私たちの腸の中にある「腸内細菌」は、善玉菌と日和見菌、そして悪玉菌で構成されています。
その中でも善玉菌が正常に働き、腸を中心とする消化器系の機能が果たされていると、全身の健康レベルが上がり慢性病を避けることができます。(日和見菌とは腸内環境の状態によって善玉菌にも悪玉菌にもなる菌のことです)
しかし善玉菌の働きが鈍くなると悪玉菌の動きを抑えることができず、腸の粘膜に傷がついて、細胞と細胞の間の結合部分が緩んでしまいます。
分かりやすく表現すると、腸管の粘膜のバリアーがすかすかになった状態ということができます。これをリーキーガット症候群といいます。
リーキーガット症候群の原因
リーキーガット症候群を引き起こす原因は、様々な要因が複雑に絡まり合っています。
例えば日常のストレス、ジャンクフードや砂糖の入った食品の摂り過ぎ、過食などの消化不良により、腸内毒素によって腸壁の粘膜がダメージを受け、漏れやすい腸(リーキーガット)になりやすいのです。
また痛み止めや抗生物質、ステロイド剤やピルのような医薬品や、アルコールやカフェイン、栄養不足や慢性的ストレスなどの日常的な要因もリーキーガットの原因になると言われています。
図1は腸管の粘膜を傷つける原因となる因子を示したものです。
腸内フローラのバランスが崩れて、悪玉菌が増えることが腸管の粘膜に傷がつく原因になると書きましたが、それ以外にも精神的なストレス、食品に含まれる有害な毒素、腸管に炎症を起こしたリーキーガットを誘発する食事、またや薬品などがあります。
これらの物質は腸管粘膜に炎症を起こし、腸管の細胞を損傷します。
その際、細胞と細胞とを繋いでいる「つなぎ目」(タイト・ジャンクションと言います)に隙間ができるのです。
通常はこの「つなぎ目」はしっかりとつながっているので、腸管の中の物質が腸管外に漏れることはありません。
<図1:リーキーガットによる免疫機能障害>
そしてその隙間から、腸から出てはいけないウイルスや菌・タンパク質などが血中に流れ出してしまいます。
リーキーガット症候群になることで、通常は体内に入ってこないようなさまざまな「炎症誘発物質」が血液中に流入し始めます。
これらの物質は、私たちの体の免疫システムのバランスを崩し、体に炎症を起こします。
この、免疫システムの機能障害、体の中に起こった炎症がさまざまな病気の原因になることがわかっています。
単に、お腹の調子が悪くなるということだけではなく、高血圧症や脂質異常症などの生活習慣病、ガン、膠原病などの免疫疾患などがリーキーガットと関係性があるということが、近年の研究からわかってきているのです。
リーキーガット症候群になると何が起こるのか?
図2は正常の小腸の状態を示しています。
図の左下が腸管内、右上の部分が腸管の周りの血管を示していると思ってください。真ん中にあるピンク色の壁が腸管細胞を表しています。
<図2:リーキーガット説明(正常)>
本来、腸は食べたものから栄養を吸収し、身体のために免疫力を維持したり、ビタミン・ホルモンを作る働きをしています(黄色の◯)。
腸管の粘膜が正常の場合は、まだ分解されていない食物成分や、毒素などは血液中に入ってくることはありません。
図3はリーキーガットが起こって腸管の粘膜が傷ついている状態を示しています。
<図3:リーキーガット説明(崩壊後)>
腸の粘膜が傷つき隙間ができて、漏れ出てはいけない食べ物の細かい粒が体の中に流れ込んできます。
これらの、まだ十分に分解されていない食物成分は、通常は血管の中に入ってくることはありませんから、体は「異物が体内に侵入してきた!」と危険信号を鳴らします。
その結果、「遅延型アレルギー」が誘発されます。これが「遅延型フードアレルギー」の原因です。
単に、アレルギー反応が起こるだけではなく、通常であれば栄養として吸収されるはずの栄養成分がアレルギーを起こしているのですから、栄養障害を合併することが多いです。
さらには、未消化な食物成分だけではなく、体にとっては有害な毒素や炎症を誘発する成分が体内に入ってくることによって、これまではなかなか原因のわからなかった、様々な不具合が起こってくるのです。
リーキーガット症候群が引き起こす全身の不調
リーキーガット状態の腸は、もちろん目で見ることはできません。内視鏡検査をしても腸に空いている穴が見えることはありません。
そのためリーキーガットが原因で体の不調が起きていても、原因として特定するのはとても難しいことです。
リーキーガットから引き起こされる不調は色々あります。
原因不明の熱、筋肉痛・関節痛、胸やけ、息切れ、吐き気、腹痛、抜け毛・もろい爪、お腹の張り・消化不良、不眠症、記憶力低下、集中力低下、不安感、まとまらない考え、疲労感、下痢・便秘、口臭、神経過敏、食欲低下、ニキビ、じんましん、喘息、アトピー性皮膚炎、クローン病、過敏性腸症候群・・・
このように実に多彩な症状や疾患があげられます。
つまり全身および精神に関わる様々な不調が、腸内の状態と関連していると言えるのです。
しかし、リーキーガットがもたらす症状には個人差があることや、正しく診断をする検査方法がなかったため、最近まで医学的な定義や治療がされにくかったのです。
私たちの腸は身体のセキュリティシステムとしての役割も果たしています。
その腸がリーキーガットを起こすことで、細かく分解された食べ物の分子だけではなく、有害な毒素やホルモン、ウイルス、食品添加物、合成保存料などが腸から血中に流れ込んできます。
すると、私たちの体は「異常な物質が体の中に入ってきた!」と警報を鳴らすことになります。
つまり、免疫システムに大きな負担がかかるのです。免疫システムのバランスが狂った結果、様々なアレルギー疾患や自己免疫疾患といった病気が起こることもあります。
自己免疫疾患とは円形脱毛症・関節リウマチ・慢性疲労症候群や、橋本病・クローン病・潰瘍性大腸炎などの身体の免疫システムが自分自身の免疫組織を攻撃してしまう病気のことです。
身体はすべて繋がっています。そして生活に大きな支障をもたらす慢性病の原因は、腸にある可能性が大きいのです。
リーキーガット症候群の診断と治療
自分の不調の原因がリーキーガットかどうかは、検査をしなくては見つけられません。 これまでは、きっちりとリーキーガットを診断する方法がありませんでした。
しかし、腸管の隙間を漏れ出て体の中に入った食物の細かい粒が起こしたアレルギー反応を調べることによって、リーキーガットの程度を評価することができるようになって来ました。先にも書いたように、リーキーガットの結果、未消化な食べ物が血液中に漏れ出ることで、「遅延型フードアレルギー」が起こります。つまり、遅延型フードアレルギーの程度を調べることで、リーキーガットの程度を推測することができるということです。
そして、このアレルギー反応を調べる検査を「遅延型フードアレルギー検査」と言います。
治療としては、食生活の改善が何よりも大切です。腸は当然、食べたものの影響を大きく受けます。そのため腸管の粘膜を傷める原因となる砂糖食品や食品添加物、イースト食品、不要な医薬品などを控え、これ以上リーキーガットが進行しないようにすることが大切です。
ストレスのたまらない生活を送り、食事をできるだけ規則正しくしても症状が治まらない場合は、腸内環境を整え、傷んだ腸管粘膜を修復するサプリメントを取ることも効果的です。
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受診の予約は、①電話での受付と②WEB予約による受付を行っております。病状や診療についてのご相談は、下欄の「ご相談・お問合せフォーム」よりお願いします。電話での相談は受け付けておりませんのでよろしくご了承ください。
当院では診療をご希望の場合は以下の2つの方法で診察が可能です。
- クリニックを直接受診する方法
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※診察の流れやFAQ(よくある質問)についてはこちらをご覧ください。
※当院での治療は基本的にはすべて自費診療(自由診療)となりますが、一部の検査は保険適応可能な場合もございます。具体的な事は診察時に説明いたします。
リーキーガット症候群に関する検査について
- 遅延型フードアレルギー検査44,000円(税込)
- 腸管の粘膜が損傷して起こる腸管漏出症候群(リーキーガット症候群)により、食べ物が充分に分解される前に血液中に漏れ出る事により遅延型フードアレルギーが起こります。この検査は遅延型フードアレルギーの程度を見る事により、適切な食事指導を行います。ネット検査可。
44,000円(税込) - 遅延型フードアレルギー検査の詳細はこちら
- 検査の申し込みはこちら
- 便総合分析検査66,000円(税込)
- 便を調べる事により腸内細菌叢のバランスや腸管での炎症や消化酵素の分泌の程度、腸管免疫の状態などを調べる事ができます。「腸内環境がどの程度乱れているか」を知る指標となります。ネット検査可。
66,000円(税込) - 便総合分析検査の詳細はこちら
- 検査の申し込みはこちら
- 有機酸尿測定48,400円(税込)
- 尿中の有機酸を測定する事によりカンジダ菌から分泌される様々な有機酸の他にミトコンドリア機能や身体のデトックス能力などを評価する事ができます。
この検査は尿中に含まれる様々な代謝産物を測定する事で身体の中のいろいろな化学反応が正常に働いているのかどうかを調べようと言うものです。ネット検査可。
48,400円(税込)※検査説明代金を含む - 有機酸尿測定の詳細はこちら
- 検査の申し込みはこちら