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重金属の治療について
私たちの身体の中には、キレート剤が入ってくる細胞の外に溜まっている重金属と、キレート剤が入ることができない細胞の中に蓄積している重金属があると考えられます。つまり、細胞の中に蓄積している重金属はいくらキレーション治療をしても効果がないわけです。細胞の外に蓄積している、つまりキレート剤が届く範囲の重金属はこのキレーション治療によって行うことができ、腎臓を通して尿中に排出されます。
そしてこのキレート剤が入っていかない、細胞の中にこびりついている重金属に対しては、デトックス治療というものを行うことができます。私たちの身体の中にはグルタチオンなどと呼ばれる、この重金属や色々な環境汚染物質などの生体異物を排出するためのデトックス酵素というものが備わっています。これらを身体の中に増やしてやることによって身体の中から外に排出することができるわけです。
肝臓でのデトックス機能にはフェーズⅠとフェーズⅡがあります。
例えば肝臓に重金属が溜まってきた場合、フェーズⅠではこの重金属が反応して外に出しやすいような形に変えてやることができます。これをフェーズⅠと言い、この時に活性酸素が発生します。フェーズⅠにより化学反応がしやすい形になった重金属はフェーズⅡに移行し、身体の外に出せるように包み込んで身体の外に排出されるわけです。
細胞外にある重金属はキレーション治療により腎臓から排出され、それをみるための検査としては尿中排泄試験というものがありますし、細胞の中にある重金属に対してはこれらのデトックス酵素の作用でを経て肝臓から処理されます。細胞の中にある重金属をみるひとつの方法としてはこのオリゴスキャンという検査があるということです。
このようにそれぞれ検査や治療の意味についてよく理解したうえで治療を行うことが大事です。
キレーション治療とデトックス治療を比べてみた図です。
キレーション治療は比較的効果が早く出るのに対して、デトックス治療は細胞の中にある重金属をゆっくりと出していくので効果がゆっくりです。キレーション治療では主に腎臓から排出するのに対して、デトックス治療では主に肝臓から排泄します。キレーション治療は細胞外の重金属を排出するのに対して、デトックス治療は細胞内の重金属を排出すると考えていただければいいと思います。
これらの治療を組み合わせて行うことにより、この患者さんの場合、最初、オリゴスキャンでかなり多量の重金属が蓄積していましたが、1年後にはこのようにかなり重金属の蓄積が改善しているのがわかります。
- 【第1話】自己治癒力を高める医療とは?
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- 【第9話】重金属の蓄積を評価する
- 【第10話】重金属の治療について
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- 【第16話】当院を受診される患者さんへ