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【第9話】重金属の蓄積を評価する

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重金属の蓄積を評価する

ではこの生体異物に対しての治療を、重金属を中心にみていきましょう。

まず私たちの身体にどれだけの重金属が蓄積しているのか、それを調べるのにはどういう方法があるのかということを説明していきます。

まず私たちの身体には食べ物や空気などを通して体内に重金属が入ってきます。通常はこれらの重金属は便・尿から9割以上排出されます。さきほども言いましたように、肝臓で解毒された重金属は再び腸内環境に出され、便として体外に排出されるわけです。それ以外には汗、髪の毛、爪などからも重金属が排出されます。

この身体の中に蓄積した重金属を直接的に測る検査としてオリゴスキャンという検査がありますし、髪の毛から排出された重金属を図ることで身体の中にどれぐらいの重金属がたまっているのかというのを予測しようとする検査として重金属毛髪検査というものがあります。さらにはおしっこを調べることで尿中にどれぐらい重金属が排出されるかというのを調べる検査があります。

まず毛髪検査からみていきましょう。

髪の毛というのは1カ月に約1センチ伸びますので、この髪の毛の根元から3センチ位を取って検査をすると、過去3カ月に暴露した重金属の量をおおよそ推測することができます。

さらにオリゴスキャンというのは手のひらで簡単に末梢組織でのミネラルや重金属の蓄積を評価できます。2~3分で結果が出るのが特徴的です。

これはオリゴスキャン検査で身体の中のミネラルの状態についてみたものですが、この方の場合、必須元素である亜鉛が著明に欠乏していることが分かります。これらの必須ミネラルは私たちの身体が規則正しくスムーズに動くための潤滑油の役割をしていますから、これらのミネラルが欠乏することで油切れが起こった状態になるわけです。

また末梢組織にどれぐらいの重金属が蓄積しているかということもわかります。この方の場合は非常に水銀が高く蓄積しています。これらの重金属は歯車の間に砂をばらまいたようになるので、体の細胞の機能がスムーズに回らなくなるわけです。

これらの検査を比較して比べてみると、例えばこの患者さんの場合、毛髪からはあまり水銀が排出されていないことがわかります。この検査だけからはまるで水銀が身体に溜まってないかのように判断されますが、オリゴスキャン検査をみてみるとかなりの水銀が抹消組織に溜まっていることが分かります。つまりこの患者さんは、水銀が身体の中に溜まっていないのではなく、それを十分毛髪に排出できない、水銀の排泄障害があるのだということがわかります。

このようにいくつかの検査を組み合わせて行うことにより、身体の中でどのような重金属の状態が起こっているのかがわかるわけです。

この検査は尿中排泄試験の結果を示したものです。

この検査は先の2つの検査とは違って、重金属を身体から取り除くキレーション治療の前後で行うものです。まずキレート剤というものを内服していただき、その直後からおしっこを溜めていただきます。するとこのキレート剤の効果でおしっこの中に重金属が排出されるわけです。

これは治療前にかなり多量の水銀・鉛が排出されている方の例です。この結果からキレーション治療を合計5回行ったところ、治療後には鉛や水銀の排泄量が低下していることが分かります。このように治療の必要性や治療効果を判定するための検査で、先の2つの検査とはそれぞれ持つ意味合いが違うのです。




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